お役立ちコラム【部屋探し】

「家賃は手取りの3割」説はもう古い?令和に考えるべき家賃のベストな割合とは。

お部屋探しでは、どれくらいの家賃を想定していますか。「家賃は手取りの3割程度」のような目安を多くの方が耳にしていることでしょう。では手取りの3割程度の家賃で、生活費をシミュレーションしてみてください。家賃に手取りの3割も支払うと、かなり厳しく感じるのではないでしょうか。

そこで今回の記事では「家賃は手取りの3割」説の実態について詳しく解説します。ベストな割合と年々上昇傾向にある家賃を抑える方法など、家計負担に悩む方必見の内容です。納得できるお部屋探しの参考にしてくださいね。

「家賃は手取りの3割」説の実態

まずは「家賃は手取りの3割」説の実態を探ってみましょう。いつ頃から言われ始めた説なのか、実際にはどの程度の人が手取りの3割のお部屋に住んでいるのかなどを詳しく解説します。

いつ頃から言われている?

明確な起源は定かではありませんが、「家賃は手取りの3割」説は1986年~1991年のバブル期に広く使われ始めたと言われています。ただ、この目安も明確な根拠が合って算出されたものではありません。なんとなく「家計のバランスが取りやすいだろう」のようなあいまいな考えから生まれたものです。

バブル期はたくさんの給料がもらえ、ボーナスも潤沢に支給されていました。そのため家賃が手取りの3割を占めても、家計を圧迫した感覚はありません。しかしバブルが崩壊し、就職氷河期やリーマンショックなど経済が停滞する時期を迎え、「家賃は手取りの3割」説はだんだんとハードルが高くなってきているのが現状です。

手取りの3割の家賃に住んでいる人は多い?

昭和のバブル期には手取りの3割と言われた家賃。令和の今の時代では、どれくらいの人が手取りの3割の家賃のお部屋に住んでいるのでしょうか。

国税庁が2023年9月に公開した「民間給与実態統計調査」によると、20代から30代の平均年収が以下の通りです。年収から想定できる月額の手取り目安も一覧で見てみましょう。

年代 平均年収 月額手取り目安 月額手取りの3割
20代前半 273万円 17万円 5.1万円
20代後半 389万円 25万円 7.5万円
30代前半 425万円 28万円 8.4万円
30代後半 462万円 30万円 9万円

年代別の手取り目安から算出できる「3割の家賃」は、5.1万円~9万円です。

総務省の「平成30年住宅・土地統計調査」によると、賃貸物件の平均家賃が約5.5万円でした。国税庁と総務省のデータから、収入を占める家賃の割合はだいたい2割程度が平均的だと言えます。家賃が手取りの3割程度に達する方は意外に少ないのです。

なぜ「家賃は手取りの3割」が難しくなった?

「家賃は手取りの3割」が難しくなったのはなぜなのか、その理由は収入の低下が考えられます。バブル期のように給料を多くもらうことが難しくなりました。厚生労働省の「国民生活基礎調査の概況」からも、年収が下がっていることが読み取れます。年収の推移は以下のとおりです。

25年間で100万円以上も平均年収が下がっています。年収の減少は「家賃ばかりにお金をかけていられない」と考える要因に。家賃以外に、電話代やインターネット代などの生活費にもたくさんのお金がかかります。将来への不安もあるため、できるだけ家賃を抑えたいと思うのでしょう。

家賃を抑えることが最大のカギ

不自由さを感じない生活をするには、固定費の削減が大きなポイントです。電話代やインターネット代など、さまざまなものが毎月出ていきます。その中でも最大の固定費は家賃。しかし家賃を抑えるのは、実は難しいものなのです。ここでは、家賃を抑えるのが難しい理由についてご紹介します。

抑えるのが難しい、年々高くなる家賃

家賃は近年の物価高の影響もあり、年々上昇傾向です。2020年の物価を基準にした「消費者物価指数」を、総務省が2023年10月に発表しています。

2022年10月から2023年10月のたった1年間でも物価が大きく上昇していることが読み取れますね。では家賃の変動はどのようになっているのでしょうか。総務省の「平成30年住宅・土地統計調査」から、1993年~2018年の家賃の変動をご紹介します。

家賃の平均価格は25年間で1万円程度上昇。2013年から2018年にかけての5年間の上昇率に着目すると、家賃の価格は3%も増加しました。固定費の大半を占める家賃が年々上昇しているからこそ、できるだけお得に暮らせるお部屋選びの重要度が上がっているのです。

そもそも家賃が高くなる理由

そもそもの家賃が高いお部屋とは、人気が集まるからこそ、高く設定されています。人気が集まるお部屋は、多くの人が「住みたい」「ほしい」と思うような内装設備がそろっている傾向です。

たとえばオートロック機能や防犯カメラ付き、2階以上の階層は、セキュリティ対策を重視したい方に選ばれています。家事や日常生活をスムーズにできる、独立洗面台や2口以上のコンロなども人気の条件です。さまざまな好条件を備えた物件は、家賃が高くてもそこに住みたいと考える人がいることから需要があります。

しかし、人気の条件が必要かどうかは、各自の暮らし方によって異なりますよね。まずは好条件のお部屋の家賃は、高い傾向にあることを覚えておきましょう。そのうえで、自分自身が本当に必要だと思う条件を見極めるようにしてください。自分に必要な条件を絞りこんでから探すと、無理なく支払える家賃のお部屋に出会える可能性が高くなりますよ。

家賃以外の費用も要確認

お部屋は、自分に必要な条件を整理してから探すことがとても重要です。家計の負担を減らすため、家賃の金額だけに着目しがちな方も多いでしょう。しかし家賃以外にも忘れずに確認しておきたいポイントがあります。

駅チカで築浅など、好条件がそろったお部屋。家賃も高すぎず、ちょうど良いと思ってもそのお部屋を契約できないかもしれません。集客のためにわざと、契約ができない「おとり物件」の恐れがあります。内見ができるのか問い合わせたり、周辺の似たようなお部屋の家賃と極端な差がついていないかを確認したりしてみましょう。

意外にチェックを忘れやすいのは、管理費と共益費の金額です。管理費や共益費は、家賃と同じように毎月支払います。家賃だけ見ると安いように思っても、トータルで換算すると高くなるかもしれません。

家賃を抑えるコツ

年々上昇傾向のある家賃を少しでも抑えたいと思うのは、誰もが考えることではないでしょうか。最後に、家賃を抑えるコツをご紹介します。

家賃が安くなる条件で物件を探す

家賃が高くなる条件とは逆の内容でお部屋を探してみましょう。一般的に、避けられがちな条件には以下のようなものがあります。紹介する条件に当てはまるお部屋のすべてが、安い家賃とは言い切れませんが、1つの目安としてぜひ参考にしてくださいね。

【利便性】

  • 最寄り駅から遠い
  • 快速や急行の停車駅ではない

【間取り・構造】

  • 築年数が古い
  • 家事がしにくい間取り
  • 室内が狭い
  • ユニットバス
  • 日当たりが悪い
  • 低階層のお部屋
  • 木造

【周辺環境】

  • 飲食店が併設された建物
  • 周辺が歓楽街

【その他】

  • 原状回復工事や清掃が不十分
  • 事故物件

条件が悪いと一見、敬遠しがちですが、自分の生活スタイルを考えてみると「悪すぎる」とは言い切れない場合もあります。たとえば、マイカーでの移動がメインの方なら、最寄り駅から離れていても不便さは感じないでしょう。掃除が苦手な方は、狭いお部屋なら掃除の負担を軽減できる可能性があります。

繁忙期を避ける

引っ越しが多い3月や4月は繁忙期と言われる時期です。繁忙期を避けたお部屋探しも、家賃を抑えるポイントに。繁忙期は新生活に向けてお部屋を探している方が多くいるため、家賃が高いお部屋でも埋まることはよくあるのです。繁忙期が落ち着いたあとは、需要が下がるため家賃交渉をしやすくなるでしょう。大家さんとしても空き部屋が続くよりは、家賃が多少下がったとしても入居してほしいと考える傾向があります。

繁忙期を避けると物件の選択肢が増える可能性があり、よりお得な家賃のお部屋に出会えることも。希望条件でお部屋を絞り、比較検討する余裕もあります。繁忙期ではじっくり考えている間にお部屋が埋まることも珍しくないため、比較検討する余裕がありません。ゆとりを持って探せる時期を選んで、お部屋探しをしましょう。

ゼロゼロ物件を選ぶ

ゼロゼロ物件とは、敷金と礼金が不要の物件のことを示します。入居時には数十万円もの費用が必要なので、できる限り抑えたいところです。ゼロゼロ物件なら初期費用が抑えられるため、新生活を始める際の負担を軽減できます。予算を抑えながら、住みたいお部屋を探したいときには選択肢に入れても良いでしょう。

一方で、ゼロゼロ物件のデメリットに注意してください。敷金と礼金が不要でも仲介手数料や保証料、鍵交換費などの初期費用が発生するので、「0円で入居ができる」わけではありません。また最低契約期間が決められていないかを確認しましょう。短期間で退去すると違約金が請求されることも。退去時のシステムにも要注意です。高額なクリーニング費用を求められる可能性があります。

家賃の補助制度が手厚い会社に転職する

福利厚生の一環で家賃補助制度が手厚い会社に、思い切って転職するのも家賃を抑える方法です。家賃へのサポートがあれば、毎月の負担を軽減できますよね。福利厚生は大手企業の方が充実しているケースが一般的です。

一方で中小企業でも特に優れたスキルや経験を持つ社員に対して、家賃補助をする例が見られます。手放したくないと思われるほど貴重な人材なら、家賃の全額を会社が負担ほど手厚くサポートする場合も。家賃の負担と仕事内容、今後のライフプランなど、さまざまな視点でぜひ考えてみてくださいね。

マンスリーマンションを選択肢に入れる

通常の賃貸物件だけではなく、マンスリーマンションも選択肢に入れてみませんか。契約時に発生する敷金や礼金が、マンスリーマンションでは不要です。初期費用を大きく削減できるため、入居時の負担が軽くなります。敷金や礼金が不要なので、手元に残った預貯金をこれから始める新生活に有効活用できるでしょう。

家具家電を買いそろえるのも金銭面で大きな負担ですよね。マンスリーマンションは家具や家電が備え付けられているため、自分で用意する手間がありません。引っ越し作業も手軽にでき、自分の身の回りの荷物を運び込むだけで生活をスムーズに始められます。

入居してからの生活費の心配も、マンスリーマンションなら軽減できる点も大きなポイントです。水道光熱費が家賃に含まれていたり一定の金額で設定されていたりするため、生活費の管理がしやすいでしょう。お部屋によってはWi-Fi環境が整ったところもあり、インターネットが入居したその日から自由に使えます。

「お試し住み」をマンスリーマンションでする選択もあり!

日本経済が活発だったバブル期に「家賃は手取りの3割」説が言われるようになりました。特に明確な根拠があったわけではありませんが、1つの目安として言われ続けてきたものです。しかし年収が少しずつ減少する中で、生活費の負担や将来への不安などから、「家賃に手取りの3割もかけていられない」と考えが広まってきました。

家賃は固定費の中で多くを占めます。そのため、家賃を抑える重要度はとても高いのです。家賃が安くなる条件でお部屋を探したり、繁忙期を避け選択肢を増やしたりして、少しでもお得に住める物件と出会えるようにしましょう。

お部屋探しをマンスリーマンションで探すのも1つの方法です。マンスリーマンションは、敷金礼金が不要で、お部屋には家具家電がそろっています。短期間の契約ができるため、「お試し住み」にも向いています。立地条件や周辺環境など、実際に住んでみないと判断できないこともあるでしょう。マンスリーマンションで暮らしてチェックしてから、納得できるお部屋探しをしませんか。

この記事を書いた人

澤田なつ/Webライター

2016年2月までCADオペレーターとして自動車部品の図面作成をしていました。2019年からフリーランスのWebライターとして活動しています。
執筆するときは「読者が知りたいことに寄り添える内容になっているか?」を意識しています。資格は、2級ファイナンシャル・プランニング技能士と簿記3級、図書館司書を持っています。
小学生の娘が2人います。趣味は裁縫で、娘たちが好きなアニメのコスプレ衣装を作ることが好きです。
着付け師範の資格を2012年に取得しており、講師経験もあります。最近では着付けの様子を動画で撮って、Instagramに投稿することにはまっています。

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